戦車道のそれまでとこれから -リトルアーミーⅡ書評-
『ガールズ&パンツァー』人気が凄い。
いや元々人気だったろうが、とガルパンおじさんとかつて呼ばれていた人種は答えるが今までの道のりは決して平坦では無かった、ガルパンには確実に冬の時代があった。
2013年に本放送が終了し、一向に延期を重ねて公開しないOVA、さらに去年の11月公開となった劇場版と、その間に真のファンはTwitterやふたばのガルパンスレでガルパンの妄想を呟き、同じく残された絵師たちの絵や公式ピンナップなどで飢えを凌いでいた。その時代に比べれば今はバブルにも等しい状態である。
冬の時代を支えていたガルパン二大コミカライズ「もっとらぶらぶ作戦」と「リボンの武者」は飢えを凌ぐにはもってこいの公式が投下する補給物資、いわばケアパッケージだったわけだが、その中に加わったタイトル「リトルアーミーⅡ」は前2作とも違った異色作だった……
と、前置きが長くなったが「リトルアーミーⅡ」の書評だ。
前作「リトルアーミー」は本編の前日譚であり、みほの小学生時代を描いたいわば「ガルパンZERO」とも言うべき作品だったが、あの台詞が本編のラストで「やっと見つけたよ!」というみほの台詞へとつながっていくという、濃厚なリンクを果たした作品でもあった。最初に続編連載決定の案内が出た時は本編の1年くらい前の話になるのではと思ったが、いざ内容を見ると本編の後日談という筋書きであった。
リトルアーミーが「それまで」の話ならⅡは「これから」という話なので、世界観にのめりこんだ人には結構な魅力があるが、これが結構イロモノに仕上がっている。
主人公はみほではなく前作でツンデレぶりを遺憾なく発揮したもう1人のヒロインこと中須賀エミが主役に代わり、舞台もベルウォール学園という本編未登場の学校になっているし、その後の大洗側の視点には行かないという作り。
不良高校の個性的なチーム、恵まれた戦車ラインナップ、聖グロに憧れる他校戦車道チームなどいい意味で予想から大分外れた出来になっているのが面白いし、本編のキャラがカメオ的に出演したり物語の根幹に関わって来たりとスピンオフならではの感じもちゃんと盛り込まれている。友情、底辺からの成り上がり、努力と勝利という普遍的な題材もちゃんと盛り込まれた良い作品だ。
しかしながら登場する作品オリジナルキャラクターの多さがネックであり、そのへんとどう折り合いを付けるのか、それでいて広げた話をどこまで続けさせる事が出来るか?というこの手の公式コミカライズやスピンオフ漫画特有の問題点にも当たりつつある事は否めなくもある。
まだ2巻まで、更に長い試合の途中までという点で終わっているのでこれから先がどうなるかはまだ未知数であるが、「ガルパンのこれから」を見れる今作は是非とも円満に完走してほしいと願ってやまないだろう。
ガールズ&パンツァー リトルアーミーII (2) (MFコミックス アライブシリーズ)
- 作者: 槌居,ガールズ&パンツァー製作委員会
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日: 2016/01/23
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (3件) を見る