自然と人類、死闘の記録 -羆嵐 書評-
熊という生き物は割と身近なようでそうでもない生き物である。都会に住んでる人なら動物園ぐらいしか見た事がないし、首都圏近郊では余程山奥に行かない限りは「近くに熊が出た」なんて情報は聞かないだろう。田舎になってくると熊という生き物は多少身近になるが、それでもたまに猟友会が始末したり町内放送で熊出るから気をつけろよという放送があったりするぐらいだ。実際、生まれ育った地元はそうだった。
そう考えると熊の恐ろしさというのはいまいちピンと来ない。最近のニュースでは死亡までに至る重大事故は少なく(それでも熊牧場で大事件とかあったりしたが)、自然における猛獣というイメージは薄れがちである。だが、そんなイメージを覆す脅威のノンフィクションがある。三毛別という言葉だけでもピンと来る諸氏もいるだろうが、あの事件を題材にした作品である。
続きを読む知恵とポジティブでサバイブしろ! -火星の人 書評-
食料に限りがあり、周りには生命もなく、なおかつ助けは1000日も後、かろうじて生き延びるだけの僅かな空間と外に広がる生存が絶望視される世界に閉じ込められたとして、人は生きて行けるだろうか。過去に様々なサバイバルもの作品はあったが、その中でもぶっちぎりで悲壮感たっぷりの設定である。火星の大地に置き去りにされた宇宙飛行士の壮絶なサバイバル記、それが今作、「火星の人」だ。
インターステラーでクズ宇宙飛行士を演じたマット・デイモンが主人公を演じた映像化作品「オデッセイ」は残念ながら公開中に見に行く事ができず、ソフト販売やレンタル待ちであるが原作は買って読んだ。ここまで夢中になってSFを読むのはどれくらい久しぶりだろうか……と思うほどページをめくる手が止まらない良作だった。
続きを読む壮絶なる海洋戦記小説の傑作 -女王陛下のユリシーズ号 書評-
冒険小説作家アリステア・マクリーンと言えば洋画ファンには「ナヴァロンの要塞」が有名だ。ざっくり説明すると断崖絶壁をくりぬいて作られたドイツ軍の大砲を、少数の特殊部隊が破壊するという内容の作品である。かなり昔に映像化され、ヒットもしたのでアリステア・マクリーンの代表作でもある、だが、映像化されてない作品も数多い。その中でも「代表作の一つなのに映像化されてない大傑作かつ代表作」がある。
「女王陛下のユリシーズ号」だ。
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