Paranoia Diary

趣味の事とかTwitterで書けなかった事とか雑感とか日記とか

「This War of Mine」レビュー

Steamで「This War of Mine」を買って遊んだのでレビュー。

 

This War of Mineとは?

 このゲームは戦時下の市民生活を題材にした異色のサバイバルゲームだ。ボスニア紛争で発生したサラエヴォ包囲を題材にしており、包囲された戦時下の都市で、犯罪、戦闘、物資不足の危機にさらされながらも生き延びようとする市民を描いている。
 とは言っても基本的な流れは「アイテムを集めて拠点をアップグレードして、アイテムをクラフトしたり入手したりして特定の期間まで生き延びる」という極めてシンプルな内容である。ゲームの大まかなデザインについてはよく見かけるタイプのモノだ。
 ただ、ゲームの毛色はかなり独特。モノトーンの画面と絵画タッチの世界や、戦時下の世界を色濃く描く要素の数々、そして非常に重苦しいゲームプレイが特徴である。

 ローカライズもされており、日本語化も可能であるが訳に関しては非常に雑で、誤字誤訳脱字のオンパレードなのであまりアテにしない方が良い。しかもフォントもクッソ見辛く解像度によっては何て書いてあるのか分からない事もザラである。まあプレイできなくはない範囲ではあるのが唯一の救いか。

ただの市民から見た戦争

f:id:coloneltaisa:20170726034526j:plain

 このゲームの基本的な目的はひとつ「戦争を生き延びる事」だ。飯が無ければ死ぬし、病気や怪我が悪化すると死ぬ、寒波が来れば凍え死ぬし、強盗の襲撃から身を守ったり、生きるための物資をかき集めて少ない物資をやりくりしながら日々の命をつないでいく、そういうゲームだ。

 しかし、戦時下の生活を追体験するゲームであるため難易度は非常にシビアだ。物資の数は頼りない上にリスポーンする事も無いし、かといってトレードによる物々交換は必要なアイテムに限って高価で手に入りづらい。街に繰り出して、物資調達をする事も出来るが、街は戦場になっているので危険が常に付きまとう。また、自由に入手できる物資も限られており、後は略奪や殺人という野蛮な方法での物資調達しか方法が無くなる。
 となると、多くのゲーマーは「だったら最初から人のモノを強奪したり殺して奪えばいいじゃん」と考えるだろう。しかしこのゲームは一筋縄ではいかないサバイバルゲームである。人間性を捨てるプレイスタイルにはペナルティがかかり、物資を盗めば操作キャラの精神状態が悪化し、殺人や略奪を繰り返す事で精神崩壊し、失踪したり自殺してしまう。
 あくまで操作キャラは一般人であり民間人でしかない。ヒーローでもなければ兵士でもない、ただの人間なのだ。

ジレンマを与える極上のサバイバル体験

f:id:coloneltaisa:20170726034605j:plain

 盗みと殺人のジレンマがゲームプレイに与える影響は実に興味深い。
 ゲーム中では街に繰り出せば様々なNPCと遭遇する。操作キャラと同じく、善良な市民だが戦時下のサバイバルを強いられる者たちや、砲撃された病院で最後まで患者を救おうとする医師だっているし、病気や飢えに苦しみ助けを求める者もいる。その誰もがプレイヤー達と似た境遇をしている。そうした者たちとどう接するか?助けを求めて来たら助けるか?それとも無視するか?自分たちが生き延びるために、彼らに危害を与えるか……?
 こうした選択肢を迫られる極限の体験こそ、このゲームの醍醐味でありメッセージ性の一部であるとも言える。初見プレイではとにかく圧倒させられるだろう。

 ちなみにゲームのシステム面で一番シビアなのが「強制オートセーブとロードのみ」「同時プレイできるシナリオがなく、1本しか進められない」で、操作ミスでキャラが死ぬのでセーブ&ロードによる手探りプレイが一切できない事。せめてシナリオ同時に3本くらい遊べるようにしてほしかった……

 峠を越えたら後はゲーム

f:id:coloneltaisa:20170726034720j:plain

 前述のとおりユニークで面白いゲームではあるが、結局はゲームなのである程度プレイしていくとゲームの攻略方法も見えてきて、倫理観を揺さぶるゲームプレイからシステムの熟知と経験がモノを言う普通のサバイバルゲームになってしまう。そこらへんは仕方ないだろう。また、発生するイベントも割りと少なく単調である。
 とは言え、複数のシナリオが用意され、それぞれのキャラクターの背景や結末などを見るために何週もするやりこみ要素がある。また、シナリオを自分でカスタマイズする事も可能で、ワークショップには大量のMODやカスタムキャラクターがあるので長く遊べるだろう。
 また、カスタムシナリオとカスタムキャラである種のロールプレイも楽しめるのも醍醐味のひとつ。これが意外と面白く、他の映画やアニメや漫画、さらには実在人物をゲーム内キャラクターとしてクリエイトして地獄の内戦に放り込む遊びを楽しめる。画像は実際に作ってみたカスタムシナリオ「ガルパン内戦シナリオ」だ。

 

総評

 非常に重苦しく、そして難易度の高いゲームであるが骨太のサバイバルゲームや極上の戦争体験ゲームであり強くオススメしたい作品である。