読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Paranoia Diary

趣味の事とかTwitterで書けなかった事とか雑感とか日記とか

ガルパンを纏った戦場絵巻 -ガールズ&パンツァー リボンの武者 書評-

ガルパン 書評

 ガルパンから萌えミリに入った人の大多数が面を食らったであろう作家とその作品がある。ガルパンのキャラクター原案担当であり漫画家、野上武志ガルパン公式スピンオフ「ガールズ&パンツァー リボンの武者」だ。

  まず野上武志って誰よ?というFNGな人にざっと説明すると「萌えミリ界の重鎮」という言葉がピッタリな人である。現在は「紫電改のマキ」「まりんこゆみ」等と言った平穏な作品を連載中であるが、「鋼鉄の少女たち」あたりで検索するとガルパン視聴者の心を粉砕する概要も知る事が出来る。早すぎたガルパンとも呼ばれる「セーラー服と重戦車」の作者でもある。

 いわばガチ萌えとガチ戦場の両方を書ける人なのだが、今作は単純なコミカライズ外伝作品といった枠組みから大きく逸脱した作品でもある。性格に言うならば作者のフィルターを通して極限まで辛味を付けた作品である。正規の戦いである戦車道からわき道に反れたタンカスロンという競技を舞台に、オリジナルや原作キャラ含めたキャラクターたちがバトルを繰り広げる――そう、構図はスポーツではなくバトル漫画である。

 戦車道は人も死なないし、戦争ではないしスポーツである。戦車戦ではなく、戦車“道”だ。しかし、原作がそのスポーツの部分に比重を置いたのと正反対に今作は「戦」を強調する作風になっている。元々、著作に戦場の惨たらしさを直球ストレートに描いた「鋼鉄の少女たち」がある時点で、リボンの武者製作決定の報で作品の方向性も知れたものであろう。案の定だが、原作にあった可愛らしいという部分は試合シーンやライバルとの駆け引きにおけるシーンではバッサリと切り捨てられている。そこにいるあるのはタンカスロンに身を費やす戦士の姿だ。

 この作者独自のフィルターにかかるとガルパンも完全に見方が変わる。原作のほんわかとした「ああ~みぽりん超かわいいんじゃあ~」というノリは殆ど鳴りを潜める。闘志と感情をむき出しにした少女たちが、己の技量と意地の望むままに火花を散らして行く。主人公の造詣も異様であり、おおよそテレビ版の世界とは住んでる世界もヴィジョンも違うまさに武人然としたJK美少女である。泥臭く、そして咽返るほどの熱気に満ちた戦場絵巻だ。

 もちろんガルパンなので人は死なないし(そもそも死人が出てたまるかという世界観なのだが)そういった意味では原作の良さという物は良くも悪くも半減している作品でもある。性格の悪いキャラクターや騙まし討ち、可愛さとは程遠い顔を見せて戦いに没頭する少女たちに、極端にカスタマイズされた原作キャラクターたち……原作で行えなかった、より「戦場」に近い空気が楽しめるのが醍醐味であるが、逆にその要素が強すぎて作品に乗り気でないという人もそれなりにいるのが事実である。原作のガールズ部分が好きだった人には正直、キツい物がある。

 一方で、ガルパンらしさはちゃんと継承されている部分もある。女の子は可愛いし、しずかと鈴の友情やライバルとの戦いから生まれる交流、徹底した戦闘描写や、試合の合間に挟まれるのほほんとした雰囲気など、間違う事なきガルパンの血は受け継いでいる。スピンオフとして楽しめる要素も多く、新キャラや新学園艦、本編では掘り下げられなかった物語や設定にも言及していく楽しさも見所のひとつである。

 しかしながら人を選ぶ作品である。とは言え、さび抜きの寿司(原作)とわさび入りの寿司(今作)、甘口カレー(原作)と中辛カレー(今作)ぐらいの差異でしかないし、萌えミリというジャンルを追ってきたベテランには「いつもの野上作品」という感じだろうし全体的にはオススメである。それにしてもこのスピンオフ、そのうちドラマCD化とかされるのだろうか。

ガールズ&パンツァー リボンの武者 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

ガールズ&パンツァー リボンの武者 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)